隣町とこの町のこと

この椅子の脚、5メートル以上はあると思う。
おそらく木に登ってそこからこの椅子に飛び移るのだと思うのだけれど
眺めのいい椅子だろうなぁ。
たまに散歩に行く山へのハイキングコースの入り口に行ってみたら
こんなおもしろい椅子に出くわしたのだ。
この椅子を見上げながら、初めてハイヒールを履いた日のことを思い出した。
5センチほど、自分の視界が高くなっただけで
それだけで世界は違うのだと思ったことがある。
今ではハイヒールを履く気もないし、それを履くにふさわしい洋服などもない。
都会から離れた郊外暮らしにどっぷりつかって
気楽に過ごしているところだ。
いったいこの椅子からの眺めはどんな世界なのだろう。
試すには、怪我のひとつでもしないと経験できないかも、、、きっと。

さてさて本題だが
以前私が住んでいた町はCardedeuカルデデウという町で
おいしいパン屋さんがあるし、オーガニック系のお店もとっても多く
素敵な雑貨屋(おもちゃ)や洋服屋さんもあってとても大好きだった。
家探しをしていた時に、この町に良い物件があったらきっとこの町から出たくなかったので
そこに住んでいたと思うのだけれど
たまたま我が家にぴったりの物件が今の町La Garrigaラ・ガリーガにあったので
今はここに住んでいる。
ほぼ、隣町のようなカルデデウとラ・ガリーガは
モデルニスモ建築がわりと残っていて雰囲気的にはとっても似ているが
違うところが結構多いことに気がついた。
ひとつは以前すんでいたカルデデウの町は人と関わるのにとても時間がかかった気がする。
ふたつ目は、この町のひとたちはカフェには行くが、外食はあまりしない。
ところが、今すんでいるラ・ガリーガの人たちは
とても気軽に話しかけてくるのだ。そしてとっても優しい。口だけではない。本当に親切にしてもらっている。
住み始めた3年前はオーガニックのお店は2店ほどしかなかったが
今では増えて4店ほどになり、いろいろ買い物も楽しくなってきた。
町ゆく人の服装を見ると、おしゃれをして町を歩いている人が目につくのだ。
特に年を重ねたおばさまたち。
さらに、カフェはもちろんのこと外食をする人が以前の町とはくらべものにならないくらい多い。
またとっても嬉しいのは去年、おいしいスイーツのカフェができたことだ。
ただし、おいしいパン屋がないのは残念なことだ。
今でも心に残っている出来事は、今の家を見に来た時に4、5人の子どもたちとすれ違った時
その中の一人の少年が私たちに「コンニチハ」と日本語で挨拶したのだ。
だいたいスペイン人の90%の人は私たちを見たら中国人とひとくくりにする人がほとんどなのに、、、。
日本語で挨拶をしてくれた少年に出会った時、その瞬間、直感的にこの町に住むのかもと思った。
何はともあれ、同じような、似たような町なのだけれど住み始めてみて
結構ちがいがあるものだなぁと感じたのだ。
違いはあれど、私はどちらの町も好きということには変わりない。
できれば、徒歩で通える範囲で両方の町が近かったらとっても嬉しいのだけれどなぁと
思うこの頃である。

100年前の服を着て

住人たちが、100年ほど前のモデルニスモ時代の服を着て町を歩くという
モデルニスモ祭りが先週末に開催されたのだ。
その他、当時の服装をして鍛冶屋さんが路上で刃物を削っていたり
皮かばん屋さんやガラス工芸、靴屋さんなどの出店があったり
当時の服を着て着飾った方々のファッションショーなどもあるのだ。
いつもの町だけれど、ファッションが変わっただけで
いつもよりちょっと素敵な風景になるのだよね。
ウキウキしちゃう。

日本でも東京なら浅草あたりならこういったイベントができそうな気がするし
やってみたら町おこしになるし良いと思う。
そもそも渋谷の街がハロウィンの仮装の時にあんなに盛り上がるのだから
こういった昔の服装の仮装祭りがあったら盛り上がるんじゃないかな。
ぜひ、やってほしいなぁ。
日本の着物って本当にすばらしいから。
柄や色に意味があるし、物語がある。
若い人たちに今、昭和ブームが起きているらしいから
明治の時代へタイムスリップ祭り、なんていうのがあったら
外国人観光客も興味津々だと思う。
なんたって、わが町ラ・ガリーガでは私は外国人で
異国の洋服にすごくワクワクするから。

ずいぶん昔の二十歳の時に自分で成人式の着物が着られるようにと思い
着付け教室に通ったことがあった。(でも成人式は結局行きつけの美容院で着付けてもらったけど)
せっかく習ったけれど、着るチャンスがほぼなくて
今ではすっかり着方を忘れてしまった。
いろいろ思い返していたら、着物が着たくなってきてしまった。
今度日本に帰った時には着物を着てみようかな。
着てみたいなぁ。

それにしても、昔の写真とかを見ると
西洋では洋服にプラスして帽子も一緒にトータルファッションとされていたのだと
つくづく思うのだ。
だって、外に出る時、着る洋服を考えるときはだいたい下半身ならジーンズにするか、スカートにするか?
黒いプリーツスカートにするなら色を合わせて黒いカットソーにしようか、それとも花柄のブラウスにするか
靴は黒の革靴にして、、、とだいたいそこまでしか考えないけれど
昔はそれに頭のこと(帽子のこと)まで考えて出かけていたのである。
いやいや、大変そうだけれどちょっと楽しい。
洋服に合った帽子をデザインするって、おしゃれだなぁ。

いつか、おいしいパンを

わが町にはおいしいパン屋がない。
ならば自分で作ってみようかなと思い、パンを作るための本を買ったのだ。
それは天然酵母から作るパンの本で
かなりの挑戦だと自分でも思ったのだけれど
真剣に取り組んでみたいと思ったので、どうせならと思ってその本を選んだ。
夫に見せたら、それ、ハードル高すぎるよと言われたが
ハードルが高いのをわざわざ買ったのだよ。
さてさて、三日坊主で終わってしまうか、続くのか
未来の私はおいしい自作のパンを食べているか、いないのか。
楽しみなところである。

そんな時に前回のブログでも書いたCardedeuカルデデウの町の
アートフェアを訪ねた時に
あの場所にSant Hirariという教会があって
いつもは閉じられている扉が開いていたので入ってみたのだ。
正面の壁画にかわいい天使が夜空に舞っているのが胸キュンで
写真を撮っていたのだけれど
遠くから引き目でカメラをかまえたら
下の方に何やらまるいものがたくさん描かれているではないか。
なんだろう?
カメラを下ろしてふと近くに寄ってみると
なんとそれがリュスティックのようなパンだったのだ。
えっ、パン。パンがこんなにたくさん描かれている〜。
こんなことってある?見たことある?
パンが描かれた教会の壁画なんて初めての遭遇。
これからおいしいパン作りを始めようとしている私のための
応援のようなパンの絵。
そんな風に解釈しておこうと思ったのである。
とにかくチャレンジ精神の小さな火がポッとついた感じがした。
よし、がんばるぞ〜。

久しぶりにあの場所へ

毎月一度は訪れる以前すんでいたCardedeuカルデデウの町
それは骨董市があるからだ。
そして、この日は同じ町の中心地から離れた場所で
自然のものを使ったアートフェアが開催されていた。
毎週土曜日の朝市でいつも買っている八百屋さんのおねえさんが
「アートフェアがあるよ〜」と教えてくれたのだ。
ちょうど骨董市があるのでその後、行ってみることにした。
近くまで来ているのに、「アートフェア」なる看板が何もない、、、
ほんとに、ここでいいのかなぁと夫と一緒に不安になった。
あったのだけれどとっても小さなA5サイズほどの看板が入り口近くに立てかけてあってとりあえず一安心。
歩き進んでみると家族連れがちらほらと。
なんとものんびり、のほほんとした雰囲気で
だだっぴろい野原に申し訳なさそうに主張のないオブジェが数カ所に点在していた。
かなり拍子抜けしたが、教会の裏側の親子ワークショップで作った作品がとっても素敵だった。
アーティストが作ったものよりもこっちの方が
とっても興味深くて、たくさん写真を撮ってしまったほどだ。
やっぱり子どもの発想っていうのはワクワクするし、生き生きしている。
意味があるようでないような感じがいい。
完全に成立させない感じがいい。
遊びがある。そう、遊びなのだ。
それがいいのだ。

教会近くに人が集まっていたので行ってみると
なんと、八百屋のおねえさんがビールを販売しているではないか。
彼女はカルデデウ在住で、この日はボランティアでお手伝いスタッフとして参加してるとのことだった。
いつも笑顔で楽しそうに仕事をしているのが彼女のいいところだ。
朝市で後ろに行列ができていても、「今日はひとりでお買い物?」とか「ヘアースタイル変えたのね、似合ってるわ」とか日常会話が始まってしまうので
日本人の私としては、後ろに人が待っているんですけど、、、と心の中で思いつつ、ドキドキヒヤヒヤするのだが、
まぁ、ここはスペイン。そろそろそんな状態でも落ち着けと自分に言い聞かせるのだが
いまだに慣れず落ち着いて話ができないのだ。

カルデデウの町はオーガニックのお店が結構あったり
自然大好きなヒッピー系の人たちも結構すんでいて
このアートフェアもそんな人たちのイベントという感じだった。

この場所は、カルデデウに住んでいた時に散歩して見つけた大好きな場所で
春には桜の花が咲いてお花見の場所に最適なので秘密にしておきたいくらいなのだ。
来年の春、また行ってみようかなと思っているところ。



Ermita de Sant Hilari 教会

リムーのワイナリーへ

この辺りはワイナリーがたくさんあるのだけれど
訪れたのが月曜日だったため、ごく限られたところしか開いていなかったのが残念だった
ところが、夫がレストランに入った時に飲んだ、おすすめのおいしいワインの会社がちょうど営業していたので
そこへ行ってみた。
(偶然にも日本語のホームページもあったのでどうぞ)
詳しくはこちら Domaine de Baronarquesドメーヌ・ド・バロナーク
細い小道を上っていくと品のあるフランスらしい色彩のシャトーが見えて来て
そのお屋敷の向かいにオフィス&ショップがある。
お店の棚に、レストランでオススメされたワインをみつけ
それと同じものを買ったのだ。
Domaine de Baronarques 2018
このワイン、とても濃厚で私好み。
素人なので愛好家のようにうまく表現ができないのだけれど
ホームページのコメントに書いてあったものを書いてみた。
「野いちご、ラズベリー、ブラックベリーといった赤果実を煮詰めたアロマとミネラル香とが混じり合って香ります。、、、力強さが印象的なワインです。」
まさに、この言葉がぴったりくる。
このワインを教えてくれたレストランとの出会いがなければ
きっとこのワイナリーへは行かなかっただろうなぁ。

そのレストランが、最初の写真に写っているカマンベールを食べたところ。
このカマンベール・チーズもこの近くの村で作っているもので
パッケージの裏を見たら「Saint Hilaire」と書いてあった。
もっと時間があったら、このカマンベールの「Saint Hilaire」村にも行ってみたかったなぁ。
食べやすくて濃厚でとっても美味しかった。

この辺りにしてはとても素敵なレストランだったので
ぜひ、行ってみてほしいなぁ。
地元の食べ物やワインを出してくれるところだし、フランス語がわからない私たちのために
一生懸命に料理の説明を知ってる限りの英単語を並べて教えてくれたのだ。
そういう人、好きだな。
そして行ったなら2階の開放的なテラス席がオススメ。
レストランの情報はこちら Le Carnotzet

コロナが始まってからこの夏はじめて外国に行ったわけだけれど(外国とはいえお隣の国)
違う言語の国へ行くのは刺激的で何があるかわからない冒険的なところがいい。
旅はいいなぁ。
と、つくづく思うのだ。